序章 ― Spring Boot 3.5 が拓く “クラウド標準 Java” の現在地
序章 ― Spring Boot 3.5 が拓く “クラウド標準 Java” の現在地
0‑1 本書の目的
本書は Spring Boot 3.5 を軸に、モノリスからマイクロサービス、コンテナ/サーバーレス、そして将来の Project Leyden に至るまで—— 「現代 Java アプリケーションが備えるべき機能すべて」 を一冊で体系化することを目指します。 公式ドキュメントの網羅性と、現場で鍛え上げられたベストプラクティスの両輪を融合し、
- ゼロから学ぶ開発者 が “最短3ステップ” で Hello World をデプロイできる。
- 既に運用中のチーム が「移行・運用・観測・最適化」の知識ギャップを 30 分で埋められる。
——そんな “実践&逆引きハイブリッド” のリファレンスを提供します。
0‑2 対象読者と前提知識
読者像 | 想定スキル | 本書で得られるもの |
---|---|---|
Java/Kotlin 初級者 | 基本文法・Maven/Gradle が触れる | 最小構成から本番稼働までの “一本道” |
Spring 2.x 実務者 | DI / MVC の経験あり | 3.x の Jakarta 移行、Virtual Threads、ネイティブビルド |
SRE/プラットフォームエンジニア | Kubernetes/Observability を担当 | Actuator・Micrometer・Buildpacks の運用設計 |
必須前提 : Java 17 以上がインストール済みであること。 推奨 : Docker/Docker Compose、Git に触れた経験があると実習がスムーズです。
環境要件
- Java: 17 (LTS), 21 (LTS) または 24 EA(本書のコード例は全バージョンで検証済み)
- Spring Boot: 3.5.0 以上
- ビルドツール: Maven 3.9+ または Gradle 8.5+
- コンテナ: Docker 20.10+ および Docker Compose V2
- OS: Windows 10+, macOS 12+, Linux (Ubuntu 20.04+ 推奨)
リンク
- 課題管理: GitHub Issues
- 議論フォーラム: GitHub Discussions
0‑3 Spring Boot 3.5 とエコシステムの現在地
2025 年現在、クラウドネイティブ化とランタイム高速化の潮流はさらに加速し、
- 構造化ログ & OpenTelemetry による観測性の標準化
- Virtual Threads + Reactive によるスケーラビリティの両立
- GraalVM Native Image & CRaC によるサーバーレス最適化
- Cloud Native Buildpacks によるサプライチェーン強化
が急速に普及しています。Spring Boot 3.5 はこれらを “設定ゼロ/スターター1行” で統合し、エンタープライズ Java の DX を一段押し上げるプラットフォーム へ進化しました。
0‑4 本書の構成と読み進め方
章 | 概要 | キーワード |
---|---|---|
第 1 章 | プロジェクトの使命と歴史 | Boot 誕生、3.x の進化 |
第 2 章 | バージョン体系・サポート | リリース列車、3.5 新機能 |
第 3 章 | セットアップ & 雛形 | Initializr、ビルド設定 |
第 4 章 | Auto‑config / Starter | 条件判定、独自スターター |
第 5 章 | データ永続化 | JPA・Spring Data・R2DBC |
第 6 章 | Web 開発 | MVC・WebFlux・RestClient |
第 7 章 | 運用・モニタリング | Actuator、Micrometer、OTel |
第 8 章 | コンテナ & ネイティブ | Buildpacks、GraalVM |
第 9 章 | セキュリティ統合 | Security 6.5、Passkeys |
第 10 章 | テスト手法 | スライス、Testcontainers |
第 11 章 | ベストプラクティス集 | プロファイル、AOT |
第 12 章 | 逆引き付録 | プロパティ一覧、スターター表 |
- 入門者 : 第 3→4→6 章でアプリを動かし、第 7 章で運用観点を学ぶ流れが最短ルート。
- 経験者 : 必要なテーマを逆引きできるよう、章立てを“機能別タイル”にしています。
0‑5 ハンズオン環境とサンプルコード
- リポジトリ : https://github.com/awesome‑springboot‑3.5‑book
-
ブランチ構成 :
chapter‑03/
– 雛形プロジェクトchapter‑07/native/
– Native Image 例chapter‑09/testcontainers/
– E2E テスト一式
- Docker :
docker compose up
だけで Postgres/Keycloak/Zipkin が起動し、書籍の全サンプルを再現可能。
0‑6 学習を最速化する3つの Tips
- Actuator を常時 ON —— 開発段階から
/actuator/health
を叩き、設定変更の影響を可視化。 - Testcontainers で “本物” をテスト —— Mock ではなく Docker 上の DB/Kafka を CI で並列起動。
- 構成バリデーションを厳格に ——
@ConfigurationProperties
+@Validated
で早期に失敗させ、デプロイ後の “環境差分バグ” をゼロへ。
0‑7 本書の表記規約
- コマンド :
$
から始まるシェル例示。 - コード : Java は record、Kotlin は data class を優先採用。
- プロパティ :
snake.case
をそのまま記載し、環境変数はSPRING_CONFIG_IMPORT
のように大文字+アンダースコアで表記。 - 注釈 : “💡Tip” はハンズオン促進、“⚠ 注意” は移行時の落とし穴を示す。
本書で得られるゴール
この序章を読み終えた時点で、読者は
- 何が学べるか — Spring Boot 3.5 の全領域をカバーした学習ロードマップ
- どう学ぶか — 章ごとのハンズオンと逆引きの使い方
- なぜ学ぶか — クラウドネイティブ Java に必要な非機能要件の重要性
を具体的にイメージできるはずです。では、次ページから Spring Boot の核心 に飛び込みましょう。